愛というもの~哀しみの中で~
「茉莉?やった!赤ちゃん!いるんだよ。ここに。」

大吾はまた私のお腹を撫でていた。
そして、しゃがみこんだかと思ったらお腹に顔を当てて

「おーい、パパだぞ。聞こえるか?」

ってお腹に話しかけていた。
私はその光景がおかしくて目からは涙が流れるのに笑っていた。

「ヘヘッ、そんな大きな声で話すとびっくりするよ。」

実感はわかないけどじわじわと温かいものが胸に広がってフワフワと気持ちが高揚してくるのがわかった。

「これで茉莉にも家族ができるな。もう一人じゃない。おいっ、元気に生まれて来いよっ。」

そんな風に思ってくれていたなんて…
私に家族が出来るんだ。そんな人生考えたこともなかったのにいつの間にか大吾といるのが当たり前になって、でも心のどこかでいつか終わりが来るって思ってた気がする。

「うっ、うっ、うっ、ありがとう大吾、本当に。」

「俺こそ、こんな俺を見離さずに一緒にいてくれてありがとう。」

そう言うと大吾は立ち上がってチュッとキスをしてくれた。
顔が離れると大吾も泣いてて二人で笑いあった。

「そうだ!でもまだ確定じゃないから病院でちゃんと見てもらおう。俺明日休めるかな?」

「えっ?明日?明日は私も仕事だよ~、明後日は?」

「あぁ、でも仕事は心配だな…人間を抱えたりするんだろ?」

「う~ん…確かに…去年妊娠した人は極力事務とか準備とか、シーツ交換とかに回ってた。」
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