愛というもの~哀しみの中で~
お通夜も御葬式も今まで出席さえしたことがなかった私は何をしてよいのかさっぱりわからなかった。

ただただ哀しみの中で大吾の隣に座っていて、先輩達が何から何まで手配してくれた。

お通夜の弔問客たちも帰り、大吾と親しかった数人が斎場に残っているだけだった。
恭吾は畳の部屋で寝かせてもらい私は大吾の側から離れたくなくて隣に座っていた。

誰かが足早に入ってくる音が聞こえる。

「こんばんは。遅くなりました。芹沢真です。」

大吾の声がして慌てて振り向くとそこには会ったこともないスーツ姿の男性が立っていた。
確かに大吾の声がしたのに…
そう思うとまた涙が溢れて止まらなくなった。

「あの、大吾の顔を見させてください。」

大吾と同じ声を発するその男性は大吾の元へ行き手を合わせていた。

「バカだな…こんなに若くして……久しぶり。お前結婚してるんだって?連絡くらいしろよ…」

大吾の声なのに、でも良く聴くと大吾のものではなかった…
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