愛というもの～哀しみの中で～

その男性はこちらへ振り向いた。

「はじめまして、私は芹沢真と申します。…大吾の兄です。今父と母はこちらへ向かってますのでもうすぐ到着する予定です。あなたが大吾の奥さんですか？」

声も似ているけどよく見ると顔も大吾に似ている。
どうしよう、どうしよう、どうしよう…
大吾、いなくなっちゃった…
冷たくなって、動かなくて、話しかけても返事が返ってこなくなっちゃった…
どうしよう…

「うぅ、ふぇ～、えっ、嫌だ、嫌、どうしたらいいのぉ～？」
堪えることが出来ず大声で泣いてしまった。
その声を聞いて起きたのか恭吾の泣き声がし始め、走って私の方へ来た。

「ママいたいの？パパいたいの？とんでけ～！いたいのとんでけ～！」

泣きながら手のひらを上にかざす恭吾を力いっぱい抱きしめた。

「大吾の子？子供もいたのか…なんてこと…」

大吾の兄と名乗った男性の声を聞いて恭吾も驚いたのかピタッと止まってその男性を凝視していた。