愛というもの~哀しみの中で~
「大吾、大吾ぉ~。なんでっ」
年配の女性が取り乱し大吾の名前を呼んでいる。
きっと大吾のお母さんだろう。そしてお兄さんと話をしている年配の男性はお父さんなんだろう。
こんな形でお会いするなんて…
年配の男性はお兄さんと少し話をすると大吾の顔を見て手を合わせ、こちらへ歩いてきた。

「初めまして。大吾の父の芹沢隆吾と申します。大吾が嫁さんをもらってたなんて。そして孫までいたなんて。」

大吾のお父さんが私に話している最中に後ろで取り乱している女性が向き直り凄い剣幕でこちらにきた。

「あなたっ!あなたが大吾をたぶらかしたの?あんなに素直でいい子だったのに急に家出して音信不通になって!あなたがっあなたが私たちから大吾を奪ったのよ!」

半狂乱で私を罵る。
私は涙が止まらずただただ恭吾を抱きしめることしかできなかった。
私の心はもう壊れる寸前だった。反論するとか何か考えるとかもうできなかった。
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