愛というもの~哀しみの中で~
「あれ?マグカップ買った?増えてる。」

「コンビニの景品の余りをもらいました。この前はお茶碗でごめんなさい。」

そう言うと慌てて麦茶をマグカップ2つに注いだ。

「じゃあこっちが俺のね。なんてね。」

あのまぶしい笑顔で冗談っぽくそう言うとキッチンに並んで立ったままいっきに麦茶を飲んだ。

「お、おかわりしますか?」

「うん、お願い。」

マグカップを私の前に差し出され、立ったまままた麦茶を注いだ。
その間、芹沢さんの視線が気になった。ずっと私を笑顔で見つめているのだ。
よく考えると酔ってる男性を家に上げて何もされない保証はない。
私は照れ隠しで横を向き、立ったまま麦茶を飲んだ。

「茉莉ちゃん、俺なんかを家に上げちゃだめだ。初めてあがったときもついキスしちまったし…」

そう言って芹沢さんは私の頬を手の甲で撫でた。
私は胸が締め付けられる感じがしてなぜか目も潤んだ。
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