愛というもの～哀しみの中で～
「パパ行く。パパ行く。」

恭吾は涙を目にためてそう言うので抱っこして大吾のそばに連れて行った。

「パパー、パパー、痛くない？痛いの痛いのとんでけー。」

その恭吾の姿を見て、私はまた泣き崩れた。
横で大吾のお義父さんが私たちを見ており、私の背中を優しくなでてくれた。

「茉莉さん、もっと早くに会いたかった。今までありがとう。息子が世話になって…。」

「私です。お世話になったのは。一人だった私に家族をくれた。私を選んで、愛してくれた…。」

「だいすき、あいしてる。パパねママすきなんだよ。」

恭吾は大吾のいつも言ってくれている言葉をお義父さんに教えてあげていた。

「そうか、パパはママが好きなのか。おじいちゃんだってパパもママも恭吾も好きだぞ。」

「きょうちゃんもね、すき。よっしーも。みんなすき。」

私はお義父さんが恭吾に優しく話しかけてくれることがうれしかった。
この子は私ひとりじゃなくおじいちゃんもおばあちゃんもおじさんもいる。
大吾と一緒に会いに行きたかった。きっと笑顔で挨拶できたかもしれない。
自分にも義理だけど両親ができたことを心からよろこべたのに…。

その夜は本当に夢の中のような現実味のない夜だった。
眠たくもなくて、痛くもなく、お腹もすかなくて、でも涙だけは止まらなかった。
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