愛というもの~哀しみの中で~
「茉莉ちゃん!大丈夫?」

由実ちゃんが私の姿を見て駆け寄って来てくれた。
私は由実ちゃんにすがりつくように抱きついた。
本当は怖かった。大吾のお父さんとお母さんだけど、独りで向き合うのも、大吾との関係を非難されるのも…

「茉莉ちゃん大丈夫だよ。ひとりにしてごめんね。とりあえずあっちに行こう。」

由実ちゃんは私を宥めるように体をさすってくれて、手を引いて寝室に連れて行ってくれた。
ベッドには恭吾がぐっすりと眠っていた。

「大丈夫?心細かったよね…いくら大吾くんの家族だからって初めて会うひとたちだもの…連絡待たずに早く来れば良かった…ごめんね。」

過呼吸は治まっていたけど、動悸がなかなかおさまらずに胸が苦しかった。

「そんな事ない。由実ちゃんもお腹大きいのに…迷惑ばかりかけてごめんなさい。」

「何で謝るのよ。私だって迷惑かけるしお互い様でしょ。もう私にとって茉莉ちゃんは家族みたいな存在なんだからこんな時こそ甘えてよ。」

初めから由実ちゃんはこうやって私を支えてくれた。だからこそ甘え過ぎてしまってるんじゃないだろうか?

「お義母さんに私の両親は?って聞かれたの。正直に児童養護施設で育ったことを話したらショックを受けてた。こんな私、大吾とは釣り合わないのに…私が独り占めしてたから…」
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