愛というもの~哀しみの中で~
私は朝ご飯にフレンチトーストを作った。
実は恭吾も甘い物を好んで食べないからうちのフレンチトーストはほんの少し砂糖を入れて、熱々のうちにマーガリンを塗っている。
真さんの好みはわからなかったけど、甘い方が好きなら上からハチミツをかければいいかなと思っていつも道りに作った。
真さんのことは何も知らなくて、とりあえずコーヒーも以前飲んでいたからコーヒーメーカーをセットした。
久しぶりに充満したフレンチトーストとコーヒーの匂い。朝の匂い。
笑顔で大吾を見送ったあの日もこの匂いがしていた。
また涙が溢れてきてぼやける視界でフレンチトーストを焼いた。

「おはよう。いい匂いがしてるね。」

真さんが恭吾を抱っこしてリビングに出てきていた。
私は慌てて涙をぬぐった。

「おはようございます。昨日はあのまま寝ちゃってすみません。運んでいただいて…重たかったでしょう。」

「それ本気で言ってる?大人の女性の重さじゃなかったけど?茉莉さんはもっと太らないと。倒れるよ。」

確かに、このひと月でずいぶん痩せてしまった。履いていたズボンがぶかぶかでずり落ちそうになるから最近はゴムのズボンをはいていた。

「お好きかわからないけど、フレンチトーストを作ったんです。召し上がりません?」

そう言いながら私は真さんの前に行き、恭吾においでって両手を前に出した。
拒否されるかなって思ったのに恭吾はすんなり私に抱っこされた。
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