愛というもの~哀しみの中で~
でもそれは現実的な話ではない。
家族って言ってもつい最近あったばかりの他人だ。
何よりもここで真さんが生活をすることで、大吾の気配が消えていくのが怖かった。

「でも…。やっぱりそんなに頼ることはできません。ご両親も反対されるでしょうし、お気持ちだけで。ありがとうございます。」

「両親には昨日の夜に茉莉さんと恭吾の様子を伝えるついでにメールで言ってあるんだ。実は今回、両親も来たがったんだが茉莉さんがまた緊張してしまうかもしれないってことで俺だけきたんだ。両親も心配してる。そうしよう。」

大吾と正反対な性格だと思っていたけどやや強引なところは大吾と似ていた。
そんな話をしていると、インターホンが鳴った。
出てみると由実ちゃんだった。

「どうしたの?由彰くんと昌美ちゃんは?」

「どうしの?じゃないわよ。なんで来てくれないのよ。待ってたのに。こんなにやせ細って。友達なのに。頼ってくれないと淋しいじゃない。」

由実ちゃんは怒って言いながら泣いて私に抱き着いてきた。

「ごめんね。だってまだ由実ちゃん出産したばっかりで無理しちゃだめでしょ。今日だって外に出て良かったの?」

「そんなのいいに決まってる。バカ、茉莉ちゃんのバカ、」

由実ちゃんは恭吾のような文句を言いながら私を力いっぱい抱きしめた。
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