愛というもの~哀しみの中で~
真さんが恭吾を抱っこして玄関まで出てきた。

「どうしたの?大丈夫?」

声を聴いて由実ちゃんはびっくりして顔を上げた。

「びっくりした。大吾くんかと思った…。ごめんなんさい。お兄さん来られてたんですね。私が出産してから1回顔を見せてくれてから連絡もろくに返ってこないから心配で来たんです。」

「そっか、やっぱり…、茉莉さんさっきの話はもう決定だから。一人にはさせられない。」

真面目な顔をして真さんが私に言う。

「さっきのってなに?一人にさせられないって…茉莉ちゃんどっか行っちゃうの?」

由実ちゃんはまた泣きそうな顔をして私を見る。
私は首を横に振った。

「真さんがしばらくここで生活するって話。実は、恭吾の様子がずっとおかしかったの。私を嫌がって…ご飯も食べないし、夜泣きも激しくて。でも昨日真さんが来てくれてからはご機嫌なの。」

「なんで言ってくれなかったの?今までなんでも言って相談しあってきたじゃない。なんで…」

「だって…迷惑しかかけてない。もう私にはお返しできないから。私大吾がいないと何もできないの。どうしたらいいのかわからない。もう嫌…、生きていたくないの。でも大吾と約束したから。恭吾のこと。だから生きていないといけなくて…。」

そういうと由実ちゃんはまた私を力いっぱい抱きしめて泣き始めた。
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