愛というもの~哀しみの中で~
「ちょっと恭吾と散歩してくるよ。由実さん、茉莉さんをお願いできる?」

「はい。」

泣きながら由実ちゃんは返事すると私の手を掴んでリビングに引っ張っていった。
恭吾は喜んでお散歩だって言っていて、玄関が閉まる音がした。

「私も大吾くんが死んでしまったの哀しくてたまらないけど、きっと茉莉ちゃんや昌の哀しみは比べものにならないんだと思う。でも一緒に泣くこともできるし、何もできなければ手助けすることもできる。私にとって茉莉ちゃんってすごく大事な存在なんだよ。茉莉ちゃんがいなくなったら私どうしたらいいのよ。ひとりで悩んじゃだめだよ。お返ししてって頼んでない。そんなのいらない。茉莉ちゃんがいてくれたらそんなのいらない。」

由実ちゃんは泣きながら怒っていた。
私はその場に座り込んでまた声を上げて泣いた。

「どんだけ我慢したって大吾に会えないの。大吾の所にいきたい。」

「大吾くんはきっと茉莉ちゃんが自殺しちゃったら哀しむと思う。ね、今は哀しくていいの。何もできなくてもいいの。頼ろうよ。私たちのことも、お兄さんのことも。私はいいと思う。お兄さんがここにきてくれるの。」

「でもね、大吾がいたところに他の人にいてほしくないの。だってそこは大吾の場所なのに。」

「大吾くんの場所はあるよ。茉莉ちゃんの心の中にちゃんとあるじゃない。そこだけは大吾くんの場所でしょ。大丈夫。」
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