愛というもの~哀しみの中で~
「こっち、見て。」

昌くんに手を引かれ机の前に連れて行かれると横の壁のポスターをめくって見せてくれた。

「あいつ本当に女に見境なくてさ、あの頃はヤれれば誰でも良くって何人とヤったかって数えてたんだ。」

昌くんが指差す先を見ると正の字が沢山書いてあった。

「マジでくずだったよ。俺と競い合って、アイツ無駄に顔も頭も良いから女の子たちは群がってくるし…ハハッ、みんな騙されるんだ。」

目に涙を溜めて昌くんは話していた。
ポケットから指輪を取り出して私に差し出す。それは大吾の結婚指輪だった。

「これ、心臓マッサージのときに電気ショック使ってて、金属は外されてその時に俺が預かってたんだ。ポケットに入れっぱなしになってるのをこの前由実が見つけて…」

昌くんは眉間にシワを寄せて涙を流した。

「ありがとう。」

私はかすれた声でお礼を言うのが精一杯だった。
私はネックレスを外すと、ピンキーリングと婚約指輪を通している横に大吾の指輪も通してまた首につけた。

「それ、あの時の…女に騙されてラブホで寝てた時の…アイツ茉莉ちゃんから捨てられるってそれ握って泣いてた。」

そんな事もあった。
初めて大吾と繋がった夜につけてくれてた。私の宝物。
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