愛というもの~哀しみの中で~
その日からまた、土日だけ真さんはうちに来て泊まるようになった。
恭吾もまた穏やかになって、過剰に泣きわめくことがなくなっていった。

そんな平日のある日の夜、女性が家に訪ねてきた。

「初めまして、私、大下と申します。芹沢真さんとお付き合いさせていただいてます。」

私はまさか真さんの彼女さんが訪ねて来るとは思わずに驚いた。
大下と名乗る女性は見るからに大人で、スーツのよく似合う人だった。

「あ、あの、初めまして、芹沢茉莉です。真さんをいつもお借りしてすみません。」

何て言っていいかわからずにとりあえず頭を下げた。

「少しお話できるかしら?」

「はい…、散らかってますけど良かったら中にどうぞ。」

一応招き入れたけれど、あまり掃除の行き届いていない部屋に入れるのは恥ずかしかった。

ソファーに座ってもらうと、女性は大吾の遺影を見つけて前に行き、手を合わせてくれていた。

「急な事であなたも大変だったわね。お悔やみ申し上げます。」

そう言って、丁寧に頭を下げられた。
私も見よう見まねで頭を下げた。

「コーヒーはお好きですか?」

「いえ、すぐに帰るから結構よ。」

少し冷たく言い放たれた。
恭吾は不思議と大下さんに近寄らず離れた所から見入っていた。

「早速だけど、真さんのことどれだけ拘束されるつもりかしら?お子さんもいて大変なのは十分に承知してるけど、ここまで真さんがしなければならないことかしら?」
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