愛というもの~哀しみの中で~
「大吾がいたことを過去のことのように言わないで。」

本当は自分の中でも少しずつ大吾がいない日常に慣れ始めてて大吾がいたことが過去になっていっていた。
そのことがすごく嫌で、罪悪感があった。

「でもな茉莉ちゃん、俺も認めたくないけどもう過去なんだ。大吾は死んで、俺たちは生きてるだろう。生きている者同士がなんとかうまくやっていくしかないんだよ。」

「昌、その話はまた今度しよう。…茉莉さん、少しずつでいいんだ。大吾は茉莉さんの中にいるから。いなかったことになるわけじゃないよ。」

そう言ってまた私の頭を撫でた。
リビングで騒いでいた二人も気になって寝室に入ってきた。
恭吾は私を見つけると私の膝にしがみついてきた。しっかりしないと恭吾が不安になるのに…。
恭吾は真さんに抱き上げられてリビングに連れていかれていた。
私も顔を上げて涙を拭った。

「由実ちゃん、ごめんね。ありがとう。私ダメダメだけど頑張る。」

「そんなに頑張らなくていいのよ。茉莉ちゃんは頑張りすぎ。」

笑って言う由実ちゃんの目からも涙が流れていた。
昌くんは私たちの前にくると、私たちの頭をぐしゃぐしゃってなでて、

「腹減った。ご飯にしよう。あいつらもぐずぐず言い出すぞ。」

って言ってリビングに行った。
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