愛というもの~哀しみの中で~
「茉莉さん…大丈夫だから。」

そう言って鞄から紙袋を取りだして私の口元に当てる。
私は隣にいる真さんに促されながらできない呼吸を整えようと必死だった。
目の前に大下さんが来ると向かいの席に座って心配そうにこちらをのぞき込んでいた。

「か、こきゅう…?」

大下さんは真さんに聞くと真さんは頷き、私の隣で深呼吸を続けた。
徐々に呼吸が落ち着いてきたけど、どうしても手の震えが止まらなかった。
どんな顔をして会えばいいのか…。

「良かった。落ち着いたのね。大丈夫?この前お会いした時よりも随分と顔色が悪いけど?」

「あぁ、ちょっと昨日の夜から調子が悪くてね。」

「昨日の?夜はずっと付いていてあげたの?」

大下さんは驚いて真さんに聞いていた。確かに、赤の他人の二人が一晩一緒にいたなんていい気持ちはしないはずだ。
私はすべてに罪悪感しかなかった。
私の父親はこの人を苦しめた人で、今もなお苦しめ続けてる人。
そして、私もたった今、彼女を苦しめている…

「ごめんなさい…。」

私はかすれて出にくい声を絞り出すように彼女に謝った。
あなたのお腹にいてごめんなさい…生まれてきてごめんなさい…そして、今も真さんを取ってしまっていてごめんなさい…
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