愛というもの~哀しみの中で~
「あぁ、いいよ。たぶん茉莉さんがいたら起きてもそんなに不安になることはないだろうし。そんなに遅くならないんだろ?」

「まぁ、先輩たちもみんな子供いるし遅くまでは飲んでないと思う。あいつらも眠くなったらぐずりだすだろうし。」

「わかった。じゃあ恭吾のこと頼むな。」

そう言って真さんは私から離れて昌美ちゃんを抱っこしていた。

「真さんは行かないの?」

「うん、茉莉さん一人にできないし、昌美ちゃんも預かったしね。」

私は困った顔をしていたから私の顔を見て昌くんが笑っていた。

「そんな顔したら真さんかわいそうだろ?嘘でも喜べよ。」

冗談っぽくそういうと私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でて出て行った。
真さんもそっと昌美ちゃんを私の横に寝かせるとリビングの方へ行った。
何か話しているようだったけど真さんだけすぐに戻ってきて、みんなは出て行った音がした。

「行ってよかったのに。私ひとりで昌美ちゃんのお世話くらいできるし…。」

「強情だな。俺も疲れたしゆっくりさせてよ。」

「自分の引っ越しだもの。あちらの部屋は大丈夫なの?」

「元の部屋は業者に掃除をお願いしてるんだ。明日に立ち合いしてもらって鍵を返したら終わり。こっちの部屋は段ボールだらけだよ。当分はこっちで寝泊まりさせてもらうよ。」

そんな。せっかく自分の家があるからそっちでくつろげばいいのに…。
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