愛というもの~哀しみの中で~
昌くんは私を力強く抱きしめた。

「辛かったな。こんな時にそんなこと知らされて。マジで。辛かったよな。でも茉莉ちゃんは悪くない。茉莉ちゃんは何も悪くない。真さんはきちんと話し合ったって、だから彼女が誰だろうと真さんが茉莉ちゃんを選んだんだ。大吾だって…真さんはどこまで知ってる?」

私は首を振った。

「何も知らない。知らせるつもりもなくて…」

「わかった。俺の口からは誰にも言わない。」

私は泣きながら頷いた。
昌くんの言葉が胸の奥の痛みを軽くした。

「なぁ、真さんを受け入れてみたら?大吾さ、マジで真さんのこと尊敬しててさ、敵わないからこそ反抗してたけど茉莉ちゃんと会って建築の道で立派になって見返すって頑張ってたんだ。そんな真さんだからこそ茉莉ちゃんを任せられるって思うんだ。」

「うぅっ…大吾…大吾…」

「ゆっくりでいいよ。少しずつ前に進もう。なっ、大吾も茉莉ちゃんを見守ってるよな?真さんなら許してやれるよな?」

玄関のドアが開く音がして、足音がした。

「どうしたんだ?茉莉さん、大丈夫?」

入って来たのは真さんで、私が昌くんにしがみついて泣いていたから驚いて駆け寄ってきた。

「バトンタッチ。」

そう言って昌くんは私の手を優しく離すと真さんに渡した。
真さんは昌くんが離れるとすぐに私を抱きしめた。

「茉莉ちゃん、俺にとっても茉莉ちゃんは特別だから。由実とはまた違った意味で愛してる。大切な家族だ。忘れるなよ。茉莉ちゃんは愛されていいし、みんな茉莉ちゃんを愛してる。」

そう言われてまた声を上げて泣いた。
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