愛というもの~哀しみの中で~
大吾、きっと私は大吾と出会った事で恭吾だけじゃなくたくさんの人の愛を貰ったんだね。
一緒におじいちゃんおばあちゃんになりたかった。

昌くんはすぐにまた真さんの部屋へ戻って行った。
私はひとしきり泣くと落ち着いた。
最近は涙が出ても止まるようになってきていた…そのことが淋しかった。

「昌があんなこと言うなんてな。立派になったよ。」

「退去の立ち合いはもう終わったの?」

「あぁ、もうほとんど形式的な物だったし、先に業者に掃除以来してたからきれいだったから。茉莉さんは何で泣いてたの?」

「大吾に会いたくて…」

「そうか、だから写真の前に。昌に連れて行かれたって聞いて何事かと思ったよ。」

「真さん、私大吾が好きなの。生きてたらきっと誰のことも目に入らないくらい。真さんのことも。」

「うん。」

「きっと今も真さんを大吾の代わりにしてるだけだと思う。この気持ちも。大吾への気持ちを隣にいてくれる真さんに向けてるだけなのかも。」

「うん。俺も大吾が生きてたら茉莉さんのことは可愛い妹ぐらいにしか思ってなかったと思う。それでいいんだ。傷を舐めあって癒やしあった結果生まれる愛もあるよ。死んだやつには敵わないのも承知してる。茉莉さんの中で一番になれない覚悟もしてる。でも一番近くにいるのは俺だ。その場所を、大吾がいた場所を俺に譲って欲しい。」
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