愛というもの~哀しみの中で~
「申し訳ないけどこれは報告だから。理解してもらえると思ってないし、許可とかもいらない。泣いて暮らしても大吾は生き返らないだろ。だから俺は茉莉さんを引っ張って前へ一緒に進むよ。もちろん大吾を忘れるって意味じゃない。心の中にいる。」

真さんはうつむいたままの私の手を握ってそう言った。

「はぁ、真はこうって言い出すとなんて言っても無理だものね。納得はしていないわ。理解できないけれど口は出さないから、これだけは約束して。自分を犠牲にしていると少しでも感じるならすぐにやめなさい。誰も責めたりしないから。あと、茉莉さん、あなたも。ただ利用しているだけならやめてちょうだいね。」

「おぉ、母さんが折れるなんて珍しいね。もう真も大人だから自分のことに責任が取れる年だ。親が口出しする年じゃないのかもしれないね。」

「そうね。それに息子を二人とも失ってしまうのは耐えられないから。真だけでもそばにいてほしいのよ。」

きっとそれがお義母さんの本音だろうと思う。
大吾を失ってしまった今、真さんまで失ってしまったらこんなに哀しいことはない…。
私はうつむいて顔を上げることができなかった。

「茉莉さんも、息子を連れて行くならちゃんとたまには連れて帰ってきてちょうだい。孫にも息子にもたまには会いたいもの。」

私は恐る恐る顔を上げると真剣な顔をしたお義母さんがこちらを見ていた。
私はきっとひどいことをしているんだ。でもきっとお義母さんなりに受け入れてくれようとしているのかもしれない。
< 306 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop