愛というもの~哀しみの中で~
「はい。」

「はぁ…昌くんのところの由実さんのお母さんにも改めてお礼に行かないとね。大吾と茉莉さんがお世話になって。私だって母親なのに蚊帳の外なんてひどいわ。」

お義母さんは目から涙がこぼれ落ちていた。

「大吾はお義母さんに泣かれるのが一番辛いって言っていました。だから一人前になるまでは絶対に帰らないって…」

「そうそう、大吾は頑なに帰らないって言ってました。どうしても一人前になった自分を見せたかったんだと思います。」

「そんな、私たちにとって一人前かどうかより顔を見せに帰ってきてくれた方がうれしかったのに。」

そう言ってお義母さんは泣き崩れた。
真さんは困ったように笑うとお義母さんの横に行き、『俺がいるよ。』って言いながら背中を撫でていた。
そんなお義母さんをみて私もまた涙が溢れてきた。そんな私を昌くんは隣にきて抱きしめてくれた。

「茉莉ちゃん、良かったな。幸せになれよ。なんかあれば相談にのるよ。由実も由実の母さんも全員茉莉ちゃんの味方だからな。」

って昌くんは耳元でこっそり言ってくれた。

その日は夕方に由実ちゃんが車で迎えに来てくれた。
最近由実ちゃんの希望で車を買ったらしい。私と恭吾も一緒に乗ることも考えて少し大きめの車にしたって嬉しそうに言っていた。
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