愛というもの~哀しみの中で~
私は昌くんの言葉に驚いて心臓が止まるかと思った。

「ハハハッ、考えてもなかったって顔してるな。でも茉莉ちゃんまだ若いし何人でも子供産めるだろ。大吾とはもう一人って話してたんだし?」

私と真さんの子供。本当に考えてなかった。

「それは大吾だから…。もう子供は産めない…。言ったでしょ、私って犯罪の上に成り立った人間だったって。それに大吾だからできてたけど、そういうことを真さんとちゃんとできるかわからないの。」

「真さんは知らないままなのか?茉莉ちゃんの母親がだれかって。」

「うん…。」

「じゃあ、できないって母親のこと知ったから?」

突っ込んで聞いてこられて昌くんには私がどう見えるのか不安になった。そして、それを真さんに知られたら嫌われるんじゃないかって思うと胸が苦しくなった。

「ううん…あの、私も大吾に会う前に同じことされたの。だから、私、本当は汚いの。」

気付けば膝の上で手を力いっぱい握りしめていた。

「茉莉ちゃんは何も悪くないし汚くねぇよ。それは違う。そっか、だから大吾も初め手をださなかったのか。俺さ、茉莉ちゃんにプレゼントにゴムでもって話したことあっただろ?あの時マジで大吾にキレられたんだ。あいつ本気で殴ってきて。あの時はごめんな。」

「大吾、怒ってたんだ。知らなかった。あの時ね、大吾、私のこときれいって言ってくれたの。あの頃に戻りたい。」

私は楽しいはずの旅行なのにまた泣いてしまって昌くんが優しく抱きしめてくれた。
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