愛というもの~哀しみの中で~
「うん…私ね、施設で育ったって話したの覚えてる?割と生まれてすぐに乳児園に預けられたらしくて親の顔も名前も知らずに育ったの。職員の先生たちからそれなりの愛情はもらったけど私だけに特別って愛情を向けてくれる人はいなくて…」

なぜこんな話を始めたのか自分でもわからなかったけど話し出すと止まらなかった。

「里親とか、養子にって親という存在と一緒に施設を離れる友達もいる中で私はそういうものにとことん縁がなかったの。早く大人になりたくて、高校にも行かずに働き始めた。」

大吾は『うん、うん、』って相づちを打ってくれてて私を絶えずぎゅーっと抱きしめてくれていた。

「そこで私を可愛いって良くしてくれる上司がいて…その優しさを愛情と勘違いしちゃった…裏切られてひどいことされて初めて気づいたけど気づいた時には遅くて…セクハラがどんどんエスカレートするけど周りは誰も助けてくれなかった。お金がないと生活出来ないから仕事辞めるわけにもいかないし堪えて、堪えて、そして襲われて…その時に私が生まれてきた意味って何かなって、私が死んで誰か悲しいのかなって考えたけど誰の顔も出てこなかった…。」

大吾は私を抱きしめる腕の力を更に強めた。
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