死者の体温〜最期のメッセージ〜

「今から調べてもらうからね。絶対、茜の最期を知るからね」

石川翠はそう言い、石川茜の頬に触れる。その体はもう冷たくなっていて、死者だと嫌でも現実を突きつけられるだろう。

「すみませんでした」

石川翠は微笑み、棺桶から離れる。藍は必ず死因を見つけ出すと決め、石川翠に微笑んだ。

台の上に石川茜の遺体を置き、藍は時計を見る。

「午後一時十六分。解剖を始めます」

藍はメスを手に取り、石川茜の体を開いていく。そして内臓を取り出していった。

「心臓、異常はありません」

「肺、異常ありません」

胃の内容物を取り出し、石川翠が「腫瘍があるんじゃないか」と言っていた胸にもメスが入れられる。

解剖は、数時間に及んだ。



「異常がなかった？」

解剖の結果を藍たちが伝えると、緊張していた石川翠の表情が一気に悲しげなものとなる。大河が慌てて言った。

「今のところは、というわけです！これから脳や脊髄などに異常がないか調べますので」