死者の体温〜最期のメッセージ〜

「高濃度乳線ですね」

朝子がそう言い、大河が「高濃度乳線？」と首を傾げる。朝子は説明した。

「日本人を含むアジアの女性は、欧米の人と比べて乳房の構成が不均一高濃度、または高濃度の人が多いと言われている。これの何が問題かって言うと、マンモグラフィー検査をした時に高濃度乳腺だと全体が白っぽく映ってしまう。でも、肝心の腫瘍も白く映るから結果的に腫瘍があるのかないのかわからないの」

「なるほど……。そうなんですね……」

大河が頷きながら藍を見つめる。藍は首を傾げ、石川翠の方を向いた。

「お願いします！妻の……妻の最期を知りたいんです！！突然こんなことになって……、これから先もずっと一緒だと信じていたのに……」

泣き続ける石川翠に、正人は真剣な目を向けて口を開く。

「もちろんです！我々が全力を尽くして奥様の死因を特定します！ですから、ご安心ください！！」

石川翠は泣きながら何度もお礼を言い、帰っていった。