天満つる明けの明星を君に②
数日が経ち、未だに寝不足のふたりは、それでも不満を零すことなく同じ部屋で過ごしていた。

とはいっても暁の出入りが頻繁だったのだが、逆にそうしてくれることでふたりきりになった時の妙な緊張感が解れて助かっていた。


「…というわけなんです」


「まあそうよね、そうなるわよね」


あれからすっかり親しくなった芙蓉と柚葉と三人で縁側で茶会を行っていた雛乃は、少し離れた場所で雪男と朧がふたりで茶を飲んでいるのを見ながらじっとり頷いた。


「でも天様は全然気になってないみたいで…。い、いえ、その方がいいんです。気持ちを知られるのは困りますから…」


雪男と朧夫婦は、種族が違っていたため、今までの間に様々な困難があったと聞いていた。

この寒い季節は雪男にとって快適だが、朧にとっては寒いため、厚着をしてもこもこになりながらも楽しそうにしている。

理想だな、と思った。

愛しさに溢れているふたりの眼差しは憧れの対象で、見つめ続けていると、ふたりが急に真面目な顔をして言い始めた。


「朔は完全な溺愛体質なの。それはもう甘えさせたがるし、猫かわいがりしてくるわ。輝夜さんもでしょう?」


「そうですね、一度捕まると話してくれません。ということは?」


「ということは、よ?天満さんも…そうなのではないの?……天満さんが…溺愛体質……」


何やら様々な妄想を巡らせているのか、恍惚とした表情になって身を捩らせているふたりを困った顔で見ていると、どこかに行ってしまった暁を捜していた天満と出くわして、全員閉口。


「雛ちゃん、暁を見なかった?」


「いえ、この辺には居ないかと…」


「そうか、ありがとう。ったく、どこへ行っちゃったんだろう…」


軽く手を挙げて違う方向へ行った天満を見送った芙蓉は、両手で口を押さえてぷるぷる。


「私も柚葉も居たのに、雛乃さんしか見えなかったのかしら?」


「やだ…天満さん、尊い…」


訳の分からないことを言ってまた雛乃を困らせて、その後も困らせ続けた。
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