天満つる明けの明星を君に②
天満のしなやかな身体の感触は――いつまでもその手触りが抜けず、内心動悸が治まらないままだった。

男に触れたのも触れられたのも、天満だけ。

だが何故だかそれが本当に嫌ではなく、ずっと触れていたいと思ってしまって、それでまた動揺。


「私っていやらしい…」


暁の鍛錬が終わり、朔が百鬼夜行に出て自由な時間になると、雛乃は火鉢の前で繕い物をしながら独り言ちていた。

いくら広い部屋とは言えどふたりきり。

そんな呟きはもちろん天満の耳にも届いていたが――こちらはこちらで、先程は雛乃を膝に乗せることができて内心握り拳を作っていたのだが、その先に進む宣言をした手前上、遠慮はしないつもりだった。


「今何か言った?」


「!いえ、いえ!何も!」


「そう?そういえばさっきのことだけど」


すでに床は二組敷かれていて、そちらを指した天満は、何の気なしにあたかも自然に衝撃の発言を口にした。


「先に進むっていうのは、例えばあの床を一組にするとかなんだけど」


「は…はい!?」


「僕が君に触れる度にいつまでも慣れていない態度を取っていたら、本当に疑われるよ?だから少しでも僕…っていうか、男に慣れていた方がいい」


――大、混乱。

開いた口が塞がらない雛乃の混乱に陥った表情を見た天満は、思わず吹き出して片手で口を押さえた。


「でも…!それは…だ、男女同衾せず…!」


「やましいことをしようっていうわけじゃないよ。一緒に寝るだけ」


それはつまり、天満の寝顔を見れる絶好の機会。

だが同時に自分の寝顔も見られてしまう。


「待って…待って下さい…!ちょっと整理がつかない…」


「整理してたら絶対嫌だって言われるから何も考えなくていいよ。さあ、試してみようか」


ぐいぐい。

最高の笑顔を見せる天満の押しの一手に、あわあわ。
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