天満つる明けの明星を君に②
これは…してもいいという合図なのだろうか?

余裕ぶっているように見えて、実はいっぱいいっぱいだった天満は、目を閉じた雛乃の頬に手を添えて一瞬悩んだものの、強烈な欲求には逆らえず――雛乃の可憐な唇に唇を重ねた。

それはとても甘くて、やわらかくて…忘れかけていた感触だった。

雛乃の身体が一瞬震えて、それは恥ずかしさからなのか、不安からなのか――ともかく可愛くて、なんとか自制心を働かせた天満は、唇を離して雛乃をじっと見つめた。


「いやだった?」


「……は、はじめてなのでよく分からな…でも…私…知ってる気がする…」


その優しさを。


――魂のどこかで覚えてくれているのだろうか?

嬉しくなった天満は、体勢を変えて雛乃に覆い被さるような形になると、誰もがうっとりする心からの笑顔を浮かべて小さな耳を触りながら囁いた。


「違うのもしていい?」


「な…なんですか違うのって…。私もう限界…」


「大丈夫大丈夫、僕に任せて」


流れに逆らえず、このまま抱かれてしまうのだろうかと不安半分、嬉しさ半分で至近距離にある天満の顔を見つめていると――遠くからどたばたと騒がしい足音が近付いてきて、天満がため息をついた。


「邪魔が入ったね」


「じゃ、邪魔…?」


天満が身体を離して雛乃の傍で寝転ぶと、勢いよく襖が開いて暁が乱入して来た。

ひとつの床に寝ているふたり――

きょとんとしている暁はまだ性教育がなされておらず、なんだか仲良く寝ているふたりが微笑ましくて、にこにこして勢いをつけると、布団に身を投げ出した。


「痛い!」


「天ちゃんと雛ちゃん一緒に寝るの!?私も一緒に寝る!」


「あ、暁様、これはその…!」


「いいけど三人で寝るのは狭くない?もうひとつ床を敷いてくっつけて寝ようか」


「きゃー!そうする!」


嬉しくて手足をばたつかせて喜ぶ暁の頭を撫でて起き上がった天満は、その後二組の床をくっつけて三人で寝転んだ。

実現できなかったことが、実現した。
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