天満つる明けの明星を君に②
天満と唇を重ね合った――その事実は、少なくとも自分に好意を抱いてくれているのだと実感した。

でもあんな綺麗な男が自分なんかを選ぶのだろうか?

大した特技もなく、大して美しくもなく、大して性格も明るくないというのに。


「暁様…寝てしまいましたね」


「何も真ん中で寝なくていいのに。まあいいか」


――すやすや寝ている暁の寝顔を見ていると、とてつもない幸福感に包まれた。

こんな可愛らしい子に恵まれたならば、どんなに幸せだろうかと考えると、天満を強く意識してしまった。


「天様…さっきの口付けは…」


「一生お嫁には行かないって言ってたのにごめん。案外忍耐力はないらしい」


「いえ…でもその…私なんかに…」


「私なんかって何?雛ちゃんは可愛いよ。守りたいって思う。こんな気持ちになったのは本当に久しぶりなんだ。ずっと触っていたいと思う。それが僕の答えだよ」


‟好き”とは言わないものの、それは言ってくれたものと同じ。

だが前向きな性格ではない雛乃は、自ら好きだと告白して玉砕する可能性も拭いきれず、それを口にしなかった。


「ちなみに次に進むって…なんですか?」


「暁が居るし、今は無理だけど…吉祥の出方次第では僕も色々考えないとと思ってるよ」


天満が腕を伸ばして雛乃の頬に触れた。

その手の大きさと温かさは本当に心地よく、目を閉じると、その掌から自分の身体にじんわり伝わってくるものを感じて、うとうとしてしまった。


「私…天様に甘えっぱなしで…」


「それでいいんだよ。僕も甘えさせたがりだから、これからは遠慮しないように」


暁がぎゅうっと抱き着いてきた。

その小さな身体を抱きしめて、眠った。

こんな幸せはない、と思った。
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