天満つる明けの明星を君に②
今までは、天満の強い理性力で以て欲望はねじ伏せていた。

今までは、そんなに強い感情は、あの時以来失っていたものだと思っていた。

だが彼女は今、輪廻転生という奇跡の御業で目の前に居る。

想いが重なる今、抑制などする必要はない。


「全部って、何、ですか…?」


「体験すれば分かるよ。というわけで、雛ちゃんは僕に全てを委ねてもらえるんだよね?」


「それは……はい…」


雛乃は湯着を着用しているものの、それは湯に張り付いてあまり役目を果たしていない。

肌こそ透けていないものの、その身体の柔らかさは比ではなく、やや熱い湯で上気した雛乃は目がとろんとして唇は少し開いていた。


今までは――ままごとのような口づけしかしなかった。

だがもう遠慮することはないと言わんばかりに、天満はゆっくり顔を近付けて雛乃の唇に唇を重ねた。

そして‟雛乃”にはしたことがない情熱的な口付け――つまり舌を差し込み、絡めて貪った。


「…っ」


言葉もなく求めてくる天満の貪欲さに、雛乃はただただ何もできず、ただ圧倒的に‟愛されている”という自覚と狂喜に打ち震えていた。


どうすれば、自分もとても愛していると伝えることができるのだろうか、と考えたが、天満のもたらす優しくも、身を委ねてしまえばあっという間に堕落してしまうと思えるほどの快楽に何をできるはずもなく――


「!天様、待…っ」


「待たない」


胸元からするりと差し込まれた手を押し止めようとしたが、抵抗できない。

それほどの快楽であり、支配されることへの狂気で自分自身が爆ぜてしまいそうだった。


これ以上何かされてしまうと、自分の存在など溶けて無くなってしまうかもしれない――


そうぎゅっと目を閉じた時――


『その方は、私のものなの』


内なる声に――我に返った。
< 167 / 213 >

この作品をシェア

pagetop