天満つる明けの明星を君に②
朔から雛乃の引き留めを頼まれていた芙蓉と柚葉は、眼窩が落ちくぼんで天満以上に憔悴している雛乃を必死になって話しかけ続けていた。
沈黙が流れるといたたまれない空気になってしまう――
芙蓉たちにとっても雛乃は大切な存在だが…それ以上に天満の方に情がある。
ふたりとも天満が妻子を亡くした過去については朔たちに聞いていた。
なんと非情な運命――深く同情して初対面時に緊張して目も合わせてくれなかったが徐々に心開いてくれた時は、それはもう嬉しかったものだ。
その天満が亡くした妻…つまり雛乃が転生して目の前に現れた時の衝撃といったら。
絶対に今度こそは、と朔たちが息巻いたのも仕方のないこと。
そしてどんなことでも協力しよう、と芙蓉と柚葉は固く手を握り合ったのに。
「じゃあ私…そろそろお暇します。暁様のお着替えを準備しないと」
「あっ、あっ、ちょっと待って、美味しいお菓子があるのっ。一緒に…」
「ありがとうございます。…でも行きますね、また楽しいお話聞かせて下さい」
柚葉が腰を浮かして引き留めようとしたが、げっそりしてしまった柚葉の横顔に言葉を詰まらせて絶句してしまった。
「芙蓉」
「!」
部屋の外から聞こえてきた静かな声に飛び上がりそうになった柚葉は、硬直して立ち尽くした。
そして音もなく開いた襖の前に立っていた朔は――俯いて顔を上げない雛乃の肩に優しく手を置いた。
「少し話をしよう」
「……はい…」
とうとうこの日が来たのだ、と思った。
沈黙が流れるといたたまれない空気になってしまう――
芙蓉たちにとっても雛乃は大切な存在だが…それ以上に天満の方に情がある。
ふたりとも天満が妻子を亡くした過去については朔たちに聞いていた。
なんと非情な運命――深く同情して初対面時に緊張して目も合わせてくれなかったが徐々に心開いてくれた時は、それはもう嬉しかったものだ。
その天満が亡くした妻…つまり雛乃が転生して目の前に現れた時の衝撃といったら。
絶対に今度こそは、と朔たちが息巻いたのも仕方のないこと。
そしてどんなことでも協力しよう、と芙蓉と柚葉は固く手を握り合ったのに。
「じゃあ私…そろそろお暇します。暁様のお着替えを準備しないと」
「あっ、あっ、ちょっと待って、美味しいお菓子があるのっ。一緒に…」
「ありがとうございます。…でも行きますね、また楽しいお話聞かせて下さい」
柚葉が腰を浮かして引き留めようとしたが、げっそりしてしまった柚葉の横顔に言葉を詰まらせて絶句してしまった。
「芙蓉」
「!」
部屋の外から聞こえてきた静かな声に飛び上がりそうになった柚葉は、硬直して立ち尽くした。
そして音もなく開いた襖の前に立っていた朔は――俯いて顔を上げない雛乃の肩に優しく手を置いた。
「少し話をしよう」
「……はい…」
とうとうこの日が来たのだ、と思った。