天満つる明けの明星を君に②
その頃まだぼんやりしながら幽玄町を徘徊していた天満は、上空に多数の猫又一族が飛んでいるのを見て足を止めた。

視覚と嗅覚に優れた虎柄の猫又はすぐ天満を見止めて幾つもの長い尻尾を振り回して急旋回すると、階段を駆け下りるようにして天満の前に舞い降りた。


「猫又、どうしたの?」


「天様、主さまが捜しておられるのですぐ帰るにゃ!僕に乗ってにゃ!」


「え、え、なんだろう、何かあったのかな…まさか暁に何か…」


最近ぽんと同様しょんぼりしていることの多い暁を案じていた天満はすぐさま猫又に乗ると一路屋敷へ戻り、庭に下りた所で雪男が駆け寄って来るのを見て眉を潜めた。


「雪男、何かあったの?」


「ああ、うん、ちょっとお前に確認してもらいたいことがあるんだ。でも今風呂に入ってるから…」


「風呂?ごめん、全然意味が分からないんだけど」


「や、俺らも全然分かってねえから一緒に確認しよう。な?」


よく分からないまま頷いた天満は、自室で寝ていた暁が目を擦りながら障子を開けて出て来たのを見て手を振った。


「天ちゃんおはよ…。何かあったの?」


「うん、何かあったみたいなんだけどよく分からないんだ。ほら、顔を洗って歯を磨いて。その後少し身体を動かそう」


こくんと頷いた暁と一緒に井戸の方へ消えて行った天満を横目で見ながら朔の元へ戻った雪男は、誰もがまだ困惑している中、現在の状況を精査して朔に進言した。


「主さま、もし雛乃が雛菊の転生した姿だったらどうする?俺は今度こそ…今度こそ、天満に幸せになってほしい。ありとあらゆる手を使ってでも、絶対に」


「それは俺も同じだ。暁と雛菊…いや、雛乃が同じ場所に揃った。何も起きないはずがない。雪男、うちの使えるだけの手を使っていい。あれを…天満を皆で幸せにしてやる」


「了解」


いよいよ再会の時。

胸が高鳴った。
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