天満つる明けの明星を君に②
途中、柚葉が開いている店にも寄った。

ただし商品の全てが柚葉の手作りであり、店頭に品物を出すと飛ぶように売れてしまうため、店の戸は閉まっていた。


「残念ですけど、すごく人気があるんですね」


「柚葉さんが作るものは可愛いから。暁の小物もほとんど柚葉さんが作ってくれたものだし、そうだ、ふたりと仲良くなれた?」


「人見知りをしてしまってあまりお話できてませんけど、とても良くしてもらってます」


そう、と相槌を打った天満を家路に帰りながら見上げた雛乃は、左耳に光る紅玉の耳飾りとあまりにも美しい横顔に見入ってしまい、足を止めた。

――どうして自分が持っている簪と全く同じの物を天満が持っているのか訊きたかったが、もし違うと言われたらそれはそれで恥ずかしくてたまらない。

それではまるで自分が天満の気を引いたり、天満を好いているみたいじゃないか、と思った所で、意識してしまって指がぶるぶる震えて慌てて両手で擦った。


「?どうしたの?」


「い、いえ…別に…」


「今日はほんの一部案内しただけだから、次は違う所を案内するよ。楽しかった?」


「はい!とっても!」


「良かった。帰ったら暁が拗ねてると思うから甘えさせてやってね」


天満の言う通り、屋敷に戻ると雪男の制止もきかずに暁が門から飛び出て来て天満に飛び掛かって寂しかった思いを切々と訴え始めた。


「天ちゃんひどい!一緒に行きたかったのに!」


「ごめんごめん。後で美味しい物が届くから一緒に食べよう」


「食べる!」


暁を真ん中にして三人で手を繋ぎながら帰ると、朔に笑われた。

親子そのものだな、と芙蓉と笑い合い、そして天満の積極性に顔がにやつくのを止められなかった。
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