天満つる明けの明星を君に②
届けられた団子と饅頭を夢中で頬張っていた暁は、突如思い出したように隣に座っていた雛乃の袖をくいっと引っ張った。


「雛ちゃん、お風呂入ろ!」


「え…でもいつもは天様が…」


「誤解です。いつも一緒に入ってるわけじゃないし、暁はもうひとりで入れるんだからひとりで入っておいで」


「やだやだー!一緒入る!」


駄々をこねて頬を膨らませている暁の我が儘にほとほと弱いふたりは、仕方なくその要求に従うことになり、女ふたりは風呂場に消えて行った。


「…雛ちゃんとお風呂…」


一応用心にと風呂場の外の長すぎる廊下で待機していた天満は、ついもやっとしつつも中から聞こえる明るい声に頬を緩めていた。

鬼族は成長期を迎えると爆発的に心と身体が発育する。

男の自分では対処できないことも増えてくるはずだし、そういう点でも雛乃が暁付きとして働いてくれることはとても嬉しかった。


「天ちゃんただいまー!あのね!雛ちゃん意外と胸がおっ…」


「きゃー!あっ、暁様!やめて下さい!」


「そ…そっか…」


つい顔が赤くなった天満と目が合った雛乃もまたかーっと顔が赤くなってふたりでもじもじ。

ふたりを交互に見ていた暁は、なんともいえない良い雰囲気に、背伸びして天満の耳をひっぱってこそりと問うた。


「天ちゃん、雛ちゃんのこと好きなの?」


「えっ、なんでそんなこと…」


「私ね、雛ちゃんは天ちゃんのこと好きだと思うよ?でも私が一番天ちゃんのことが好きだけど!」


「はいありがとう。変な勘繰りはしなくていいから、朔兄が百鬼夜行に出たら気を高める特訓だよ」


――互いに意識はしている。

雛菊としての記憶が無くとも、好いてくれている、と思う。

もう何も遠慮することはないし、積極的に攻めて雛乃の赤くなって困った顔も見てみたい。


「なんか…楽しいな」


わくわくしていた。
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