天満つる明けの明星を君に②
天満たちの視線に晒されてとうとう耐えられなくなった雛乃は、両手で顔を覆って蚊の鳴くような声で呟いた。
「……天様…です…」
――一同、沈黙。
本当に小さな小さな声だったため聞き逃した者が多く、雛乃の傍に居た芙蓉と柚葉だけがしっかり聞いていた。
「え…そうなの!?でも、でも本人否定して…」
「すまない、聞こえなかったからもう一度」
「だから…だから……天様なんです!」
「…え!?僕!?いや、僕はそんなことしてな…」
「寝ぼけてたんです!天様寝ぼけてたから!だから私、気にしてません!」
…雛乃がここへ来てはじめて大きな声を上げた。
天満の否定する声に被せるようにして寝ぼけていたのだと主張し、芙蓉の手から首巻きを奪い取ってぐるぐるまた巻くと、勢いよく深々と頭を下げた。
「ですから!お気になさらず!私!本当に気にしてませんから!失礼します!」
脱兎の如く逃げるように居なくなった雛乃を茫然と見送った面々の視線は、その後天満へと向かった。
そして全く身に覚えのない天満があわあわ焦っていると――暁がぱかっと口を開いた。
「天ちゃん怖い夢見てた時雛ちゃんが傍に居たでしょ?あの時だと思うよ?だって雛ちゃんあの時首押さえてたから」
「これは責任問題だぞ、天満」
「え…え……朔兄…僕…どうすれば…」
「とにかく謝り倒しなさい。そして責任を取りなさい」
兄ふたりに諭された天満は、慌てて立ち上がって部屋を飛び出して行った。
珍しく追いかけなかった暁を膝に乗せた芙蓉は、美しい長い黒髪を撫でてやりながら顔を覗き込んだ。
「ついて行かなくていいの?」
「うん、雛ちゃんになら天ちゃんをあげてもいいと思ってるから」
皆が笑みを噛み殺した。
「……天様…です…」
――一同、沈黙。
本当に小さな小さな声だったため聞き逃した者が多く、雛乃の傍に居た芙蓉と柚葉だけがしっかり聞いていた。
「え…そうなの!?でも、でも本人否定して…」
「すまない、聞こえなかったからもう一度」
「だから…だから……天様なんです!」
「…え!?僕!?いや、僕はそんなことしてな…」
「寝ぼけてたんです!天様寝ぼけてたから!だから私、気にしてません!」
…雛乃がここへ来てはじめて大きな声を上げた。
天満の否定する声に被せるようにして寝ぼけていたのだと主張し、芙蓉の手から首巻きを奪い取ってぐるぐるまた巻くと、勢いよく深々と頭を下げた。
「ですから!お気になさらず!私!本当に気にしてませんから!失礼します!」
脱兎の如く逃げるように居なくなった雛乃を茫然と見送った面々の視線は、その後天満へと向かった。
そして全く身に覚えのない天満があわあわ焦っていると――暁がぱかっと口を開いた。
「天ちゃん怖い夢見てた時雛ちゃんが傍に居たでしょ?あの時だと思うよ?だって雛ちゃんあの時首押さえてたから」
「これは責任問題だぞ、天満」
「え…え……朔兄…僕…どうすれば…」
「とにかく謝り倒しなさい。そして責任を取りなさい」
兄ふたりに諭された天満は、慌てて立ち上がって部屋を飛び出して行った。
珍しく追いかけなかった暁を膝に乗せた芙蓉は、美しい長い黒髪を撫でてやりながら顔を覗き込んだ。
「ついて行かなくていいの?」
「うん、雛ちゃんになら天ちゃんをあげてもいいと思ってるから」
皆が笑みを噛み殺した。