天満つる明けの明星を君に②
天満は幼い頃から女が苦手だった。

恋に狂った女に何度も襲われかけた経験があり、女は怖いものだという刷り込みに近い認識があるため、雛菊以外の女とはほとんどまともに話したことすらない。

そんな天満にも、普通に話せる女たちが居る。


「天満さん、暁には必ず夜叉の仮面を付けさせて下さいね」


「心得てますよ。暁の素顔は晒さないように気を付けます」


「芙蓉ちゃん、天満さんなら安心して任せられるから大丈夫だよ」


天満の両隣には、朔の妻の芙蓉と、輝夜の妻の柚葉。

芙蓉は超絶な美人で、柚葉は愛らしく癒し系で、このふたり――天満に偶像的な崇拝を抱いている。

何しろ天満の容姿が、朔と輝夜のさらに選りすぐって良い部分を結集させたような顔をしているからだ。

憂いに満ち、なかなか目線を合わせないが、朔たちと話している笑顔が最高に素敵で、透明感溢れる美貌を遠くからふたりで愛でるひと時が癒しの時。

ふたりは天満と暁の縁を知っているが、本人たちには知らせていない。

知らせる必要がないほど、ふたりはすでに親子といっても差し支えないほど強い絆で結ばれているのだから。


「暁はまだ幼いですけど、刀術の基礎はしっかり仕込んでるし、知らない人についていっちゃいけないよって言いつけてありますから。言うこときかなかったらどうしようかな…お尻を叩きます」


「いいですよ、泣くまで叩いて下さいね」


冗談だったのにまさかの芙蓉の許可が出て天満が吹き出すと、ふたりはうっとり。

天満はそれに気付かないまままた愛刀の手入れに勤しみ、暁は狐狸と共に庭で花に水遣りをしていた。


「雛ちゃんの小物とか着物があるんです。きっと暁に似合うから使ってもらおうかな」


暁に引き継いでもらいたい――

何故か強くそう思っていた。
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