幼なじみの不器用な愛情
高橋がシュートを決めても隆弘はその場から動かなかった。
「あいつは小さいころに本当につらい経験してんだ。」
「つらい経験?親がいないこと?」
「両親が見つからない間、ずっと一人家で待ってたんだ。たった5歳の子が一人でだぞ?何日間も」
高橋は知らなかった事実にボールを持ち立ち止まる。
「それ以来、華は誰かを待つことが苦手になった。」
「・・・何となくそれはわかってた。」
「そっか。」
「あぁ」
「両親が亡くなっておばあちゃんも亡くなって華は自分の居場所を見つけるみたいに一人でいることに対して恐怖心を持ってる。」
「それは知ってるよ。華ちゃんが次々にパートナーを変えてることも知ってたし。でもそれは相手が悪いだろ?華ちゃんは悪くない。」
「あぁ」
高橋は自分が思っていた以上に華をわかってくれているのかもしれないと隆弘は思った。
「誰かと必要以上に深く関わらないのは離れることに対しての恐怖心があるからだ。」
「あぁ。」
「だから、華を大切にしてやってほしい。」
「・・・」
隆弘は高橋を見る。その真剣な顔に高橋は隆弘の華への気持ちを確信した。
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