幼なじみの不器用な愛情
笹本の嬉しそうな表情を見て、複雑な気持ちになった。

隆弘は後ろから華の浴衣姿を見てどきどきした。その恰好が自分のための物じゃないとわかっていてもどきどきする。自分よりも頭ひとつ分以上背の低い華の浴衣の首元から覗くうなじにもどきどきした。

「まずは祭りと言ったら出店だろ。」
そう言って高橋は華の手を引いて出店の並ぶほうへ歩いて行った。
いつもよりも高橋の華を手を握っている力が強い。
華は何も言えずに高橋についていく。

「華、これ食べる?」
「うんん。」
とても何かを食べるような気にはなれない。
「じゃあ一緒に食べよ。」
「うん。」
高橋がどんどんと華をリードしていく。

隆弘は笹本に気を使って、「俺たちも食べるか」と笹本と自分の分も出店で食べ物を買った。
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