幼なじみの不器用な愛情
隆弘が車に実家から持たされた食べ物や同棲したら使えるからと、もらった布団や生活用品の山を車に積み込んでいる間も隆弘の両親は華に夢中だった。
「華、行こう。」
隆弘が荷物を積み込み玄関へ戻ると華が嬉しそうに笑っていた。
「また来ます。お邪魔しました。カレー、ごちそうさまでした。」
華が隆弘の両親に頭を下げると隆弘の母が再び華を抱きしめた。
「本当に。また来てね。待ってるから。あんまり無理しないで。ちゃんと食べて。何かあったら隆弘でも私たちでもいいんだから、ちゃんと甘えて頼ってね。」
「ありがとうございます。」
華は再び涙ぐむ。
「じゃあ次は俺だな。」
と隆弘の母が華から体を離すと両手を広げる父に隆弘が「んなわけないだろ」と華の体を父から遠ざけるように自分の方へ引き寄せた。
「華ちゃん、今度ね。」
父が華の方へ小声で伝えると華も「はい」と小声で返事をする。
「お前まで、やめろ。」
隆弘が華を止める。
「お前だって。もう、自分の物みたいに。男って・・・」
「あーうるさい。じゃあな。」
隆弘は笑いながら華を自分の車の方へ連れて行った。
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