幼なじみの不器用な愛情
そこはかなり人気のあるとんかつ屋。
老夫婦が経営していて食事が出るまでに時間がかかる。二人で営めるよう客席も少なく、常に行列だった。二人は並んででも一度はそこのとんかつが食べたいと話していた。
昼食時を少しずらしても店の前には数十人の列ができていた。
そんな客を楽しませようと夫婦で育てたさまざまな植物が並べられていたり、色とりどりの風鈴が下げられていて、二人は全く退屈せずに待つことができた。

どんな時間も、今は一緒にいることが楽しくて仕方ない。

「なんか、懐かしい雰囲気だな。」
「うん」
お店の中のディスプレイも昭和初期のめんこやこま、凧や着物などが飾られていて二人は興味深々だった。
「落ち着くね。」
「あぁ。」
運ばれた緑茶の入っている陶器も味わいがある。
「こういうの、いいね。なんか。」
「そうだな。二人で暮らす部屋にも、好きなもの集められたらいいよな。」
「うん!」
「じゃあ、今度の休みは二人で雑貨探しに行くか。」
「うん!楽しそう。お店、ピックアップしておくね。」
「俺も調べとく。」
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