幼なじみの不器用な愛情
悲惨な事故が起きた現場とは思えないほどそこはたくさんの草花が咲いていた。

険しい山肌を想像していた華はその意外な景色に涙があふれて止まらなかった。

そこは何度もがけ崩れを繰り返し、やがて山肌は滑らかに削られ、植物が息づいていた。

父の大きな心と、花が大好きだった母のぬくもりを思い出すその光景に華は顔をゆがめて涙した。

隆弘が華の体を強く強く抱きしめる。

隆弘も初めて現場へ来たときには何度も住所を見返した。
そのくらい、事故の想像がつかない状態だった。

華は隆弘の胸の中で声をあげて涙した後に、事故現場にわずかな記憶の中の母が好きだと言っていた花を手向けた。
「ごめんね・・・お父さん、お母さん、ごめんね・・・」

手をあわせ目を閉じながら華が謝り続ける。
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