幼なじみの不器用な愛情
「華ちゃんの両親は、華ちゃんが生まれてからあの集落に引っ越してきたんだ。華ちゃんの喘息がひどくて、都会の生活は向いていないからってね。」
老人は華の方を見ながら話始める。
「昔からある集落で、はじめは溶け込むのに時間がかかるかと思ってたんだが、すぐに打ち解けてな。華ちゃんのお父さんは人のために率先して畑仕事を手伝って、お母さんは料理上手でみんなから畑でとれたものをもらってはおいしく料理して届けてくれた。特に煮物が絶品でな。もう一度食べたいくらいだ。」
懐かしそうに微笑みを浮かべる老人に華も目を閉じて両親の記憶を思い出そうとしていた。そんな華の手をそっと隆弘が握る。
「私とばあさんも君たちみたいに仲良しだったんだ。華ちゃんのお父さんとお母さんも仲がよくてな。華ちゃんと3人でよく散歩しとった。」
華は思い出す。幼いころ、両親に手をひかれて散歩したことを。
「昔はあの集落も今よりは色とりどりの花が咲いたり、今よりも活気があってな。そこに新たな色を加えてくれるようだった。」
ついさっき見て来た光景に、思い出がよみがえるとともに少しずつ色がついていく。

モノクロだった両親との思い出にも、少しずつ色が戻っていった。
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