幼なじみの不器用な愛情
「この前はごめんね。急用でさ。」
華の隣の席になったのは前日、華をサービスエリアに置き去りにした張本人だった。
「いいよ。もう。」
「あの後どうやって帰ったの?」
「迎えに来てもらった。」
「そっか。急に体調悪くなっちゃってさ。ごめん。」
華に向かって手をあわせて謝る男子に華は愛想笑いを返す。
「大丈夫だって。気にしないで。体調、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。」
嘘ばっかり・・・。華はわかりながらも気づかないふりをする。
自分のどろどろとした気持ちを消したくて「梅酒ロックで。」と再びお酒を追加した。
「華ちゃんは優しいね~だから好きだよ?」
少しすると華の隣の男が酔っぱらって華に絡み始めた。
「お手洗い行ってくるね。」
華はその場を回避しようと立ち上がる。

立ち上がった瞬間クラっと視界がゆがんだ。
「大丈夫?一緒に行こうか?」
明らかに何かをたくらむ顔で声をかけるその男に華は「平気。」と返事をしてトイレに向かった。
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