幼なじみの不器用な愛情
「ねぇ、隆弘。」
「ん?」
隆弘は優しく穏やかな瞳で華を見ている。
「私、幸せになってもいいのかな・・・」
「・・・」
「もう・・・待たなくていいのかな・・・」
華の顔が涙でゆがむ。
隆弘は華の体を抱きよせた。
「いいよ。幸せになっていいんだ。」
「・・・」
「もう、待たなくていいんだよ・・・」
隆弘の言葉に華は声をあげて泣いた。

ずっとずっと、両親を待っていた。
自分のために出掛けて事故に遭ったと思っていた両親の帰りを、幼いころから時が止まったように・・・。
小さく小さく体を丸めて居間でたった一人、両親を今でも華は心の中で待ち続けていた・・・。
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