幼なじみの不器用な愛情

トイレの横に非常階段があり、華はその扉を開けた。
少し肌寒いのがちょうどいい。非常階段の手すりに寄りかかりながら酔いを醒まそうと目を閉じ風を感じた。
飲み会が楽しいわけじゃない。誰かと一緒にいることに意味がある。スケジュール帳に予定が埋まっていることに意味がある・・・。
華は大きく深呼吸をした。

その時重たい非常階段の扉があいた。
一瞬、あのしつこい酔っ払いか？と華が身構える。

扉の向こうから姿を現したのは隆弘だった。
「華」
その声に華の心が一瞬で落ち着く。
「隆弘。」
「酔っ払い。」
「そんなことないもん」
隆弘は華の横に近づくと、華と同じように非常階段の手すりに寄りかかり目を閉じた。
「気持ちいいな。」
「うん。ちょうどいいね。」