幼なじみの不器用な愛情
「あぁ。」
二人はしばらく沈黙の中にいた。
でもこういう時間も心地よいと感じてしまう。
『華~』
扉の向こうから自分の名前を呼ばれていることに気が付き華は目を開けた。
隣にはまだ目を閉じている隆弘。その整った顔につい見とれてしまいそうになる。
『華~』
もう一度名前を呼ばれるとその声に反応して隆弘が目を開けた。
ふたりの目が合ってしまう。
「私、そろそろ行くね。」
華はごまかすように隆弘に言うと背を向け、非常階段の扉に手をかけた。
「もう飲むなよ。」
「大丈夫だってば」
「華」
その声に名前を呼ばれると華は弱い。
「ん?」
振り向くと隆弘が華を真剣な目で見つめていた。
「今日、一緒に帰ろ。」
その誘いに華は笑顔で頷いた。
< 30 / 305 >

この作品をシェア

pagetop