幼なじみの不器用な愛情
叩かれる！
そう思って華が目を閉じて身構えると
「おいっ！」と隆弘の声がした。

男子生徒よりも背が高い隆弘ががっちりとその男の手をつかんでいる。
「何してんだよ」
ものすごく低い声でその男子をにらんでいる。
「やっていいことと悪いことがあんだろ？どの科専攻だ？」
そう言って隆弘が学生証を男子のリュックから探そうとすると隆弘の友達が駆け寄ってきた。
「大丈夫か？こいつなんだ？華ちゃんに悪さしたのか？」
数名の友達が男子生徒をつかんだまま、リュックから学生証を探したり、職員を呼びに行く生徒もいた。隆弘は友達が男をつかむと自分の手を放して華の頬を見た。
「大丈夫か？」
華の口から少し血が出て頬も真っ赤になっているのを見て隆弘は「ふざけんなよ！」と男子生徒の方へ体を向けた。
華はとっさに隆弘の手をつかむ。
「だめ！」
隆弘は大学4年生のこれから就職活動を控えた身だ。暴力をふるったら不利になるかもしれない。そんな考えが浮かび華は慌てて止めに入った。そうでもしなければ隆弘は男に殴りかかろうとしている。
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