ナツ
エロ本を買うわけでも無いのに彼女はバツの悪そうな顔をした。
まあ確かにその顔になる理由も分かる。
表紙にデカデカと『女性用・感度を上げる本』
とかいてある。
あまりにも本題の主張が強すぎる。
こんな本を買う人への配慮がまるでなってない。
「私不感症なんだよね~!ガッハッハー」
と大口を開けて笑う女性でも
家に帰るとため息をつき、
コソコソと不感症を治す事をうたうサイトを読みあさる。
別に恥ずかしい事ではないが恥ずかしい事のように思えてしまう。
そんなものだ。
かくいう私もどちらかといえば不感症だ。
あの本は私も気にはなっていた。
でもやっぱりあの表紙だけはどうも受けつけなくて買うのを断念した。
それを今目の前で普段は清廉なオーラを身に纏っているであろう女性が恥ずかしそうに買っている。
気にならないわけがない。
彼氏とのセックスがうまくいかないのかな?
それとも……。
いや、一お客さんにこんな考察をするのはあまりにも失礼だ。
私なら彼女を満足させる事が出来るかもしれない。
と何故かそう思ったが、
それを口出すことはなくいつも通り
「ありがとうございました。」
と言った。
彼女は歯切れ悪く同じ言葉を返した。
その日から彼女の事が気になり始めた。
同じ町に住んでいるのかスーパーなどでもたまに見かけるようになった。
決まって彼女は甘さ控えめのチョコレートとアボカドを持っていた。
あの本にでもかいてあったのだろう、
それを愚直にまもっているのだろう。
やはり私はあの本を買わなくて正解だった。
食べ物の事を言われてもまもれるはずがない。
私の食事はいつも肉と米それと付け合せの野菜だ。
バンランスも見た目も悪いがこれが一番美味しい。
半額で買ったステーキ肉を強火で全面焼き、
弱火で中まで火を通す。
ブラックペッパーと岩塩だけの味付けでレアでいただく。
調理法があっているかも火が通っているかも分からないが、これより美味しい調理法を知らないし、当たったこともない。
今はこれが一番だ。
そんな私があんなものを食べれるはずがない。
気をつけていても無理だ。
週1日思い出して食べれたらいい方だろう。
彼女はまもって毎日それを食べているんだろうか、
そう考えると少しだけ可笑しくなった。
気になり始めたらきりがなくなる。
彼女はよく私のバイト先に来るようだった。
凛とした佇まいで本を物色した後何も買わずに帰ることが多かった。
私はバイト終わり、よく彼女が手に取った本を自分も手にとって中を少しみてみるようになった。
「で?まんまと私の策にはまったわけだ?」
彼女はおどけた表情でそういった。
「そうだよ。」
と決まりが悪そうに返事をし、
二人で大笑いをした。
実は彼女最初から私を狙ってあの行動をしたらしい。
それに私はしてやられたわけだ。
私が彼女に声をかけたとき彼女は意地悪そうにニヤッとした。
キョトンとしている私をみるのはたいそう楽しかっただろう。
「単純な女ですみませんね。」
キレ気味でいう私だったが不思議とイライラはしていない。
それよりもこの瞬間を愛おしく感じている。
「ハルが単純じゃなかったら私は、
ひとり恥ずかしそうに本を買ったかわいそうな女だったね。」
ニヒヒと笑う彼女はとても美しかった。
私は今これまでにないほど間抜けな顔をしているだろう。
そして今までにないほどの大きな幸せを感じている。
彼女も私も女性を好きになったのは初めてだったが初めてがお互いで良かったねと言い合っている。
彼女といると歯の浮くようなセリフもスラスラと出てくるから恐ろしい。
こんな時間がいつまでも続けば良いのにと思う。
彼女と出会えて本当に良かった。
まあ確かにその顔になる理由も分かる。
表紙にデカデカと『女性用・感度を上げる本』
とかいてある。
あまりにも本題の主張が強すぎる。
こんな本を買う人への配慮がまるでなってない。
「私不感症なんだよね~!ガッハッハー」
と大口を開けて笑う女性でも
家に帰るとため息をつき、
コソコソと不感症を治す事をうたうサイトを読みあさる。
別に恥ずかしい事ではないが恥ずかしい事のように思えてしまう。
そんなものだ。
かくいう私もどちらかといえば不感症だ。
あの本は私も気にはなっていた。
でもやっぱりあの表紙だけはどうも受けつけなくて買うのを断念した。
それを今目の前で普段は清廉なオーラを身に纏っているであろう女性が恥ずかしそうに買っている。
気にならないわけがない。
彼氏とのセックスがうまくいかないのかな?
それとも……。
いや、一お客さんにこんな考察をするのはあまりにも失礼だ。
私なら彼女を満足させる事が出来るかもしれない。
と何故かそう思ったが、
それを口出すことはなくいつも通り
「ありがとうございました。」
と言った。
彼女は歯切れ悪く同じ言葉を返した。
その日から彼女の事が気になり始めた。
同じ町に住んでいるのかスーパーなどでもたまに見かけるようになった。
決まって彼女は甘さ控えめのチョコレートとアボカドを持っていた。
あの本にでもかいてあったのだろう、
それを愚直にまもっているのだろう。
やはり私はあの本を買わなくて正解だった。
食べ物の事を言われてもまもれるはずがない。
私の食事はいつも肉と米それと付け合せの野菜だ。
バンランスも見た目も悪いがこれが一番美味しい。
半額で買ったステーキ肉を強火で全面焼き、
弱火で中まで火を通す。
ブラックペッパーと岩塩だけの味付けでレアでいただく。
調理法があっているかも火が通っているかも分からないが、これより美味しい調理法を知らないし、当たったこともない。
今はこれが一番だ。
そんな私があんなものを食べれるはずがない。
気をつけていても無理だ。
週1日思い出して食べれたらいい方だろう。
彼女はまもって毎日それを食べているんだろうか、
そう考えると少しだけ可笑しくなった。
気になり始めたらきりがなくなる。
彼女はよく私のバイト先に来るようだった。
凛とした佇まいで本を物色した後何も買わずに帰ることが多かった。
私はバイト終わり、よく彼女が手に取った本を自分も手にとって中を少しみてみるようになった。
「で?まんまと私の策にはまったわけだ?」
彼女はおどけた表情でそういった。
「そうだよ。」
と決まりが悪そうに返事をし、
二人で大笑いをした。
実は彼女最初から私を狙ってあの行動をしたらしい。
それに私はしてやられたわけだ。
私が彼女に声をかけたとき彼女は意地悪そうにニヤッとした。
キョトンとしている私をみるのはたいそう楽しかっただろう。
「単純な女ですみませんね。」
キレ気味でいう私だったが不思議とイライラはしていない。
それよりもこの瞬間を愛おしく感じている。
「ハルが単純じゃなかったら私は、
ひとり恥ずかしそうに本を買ったかわいそうな女だったね。」
ニヒヒと笑う彼女はとても美しかった。
私は今これまでにないほど間抜けな顔をしているだろう。
そして今までにないほどの大きな幸せを感じている。
彼女も私も女性を好きになったのは初めてだったが初めてがお互いで良かったねと言い合っている。
彼女といると歯の浮くようなセリフもスラスラと出てくるから恐ろしい。
こんな時間がいつまでも続けば良いのにと思う。
彼女と出会えて本当に良かった。