いつも、ずっと。
そうそう、俺も思ってた。

小学生の時は大目に見てたけど、本当は中学生の時から気になって仕方がなかった。

涼介が『明日美』って呼び捨てにしてること。

お前だって彼女のことを他の男から『京子』って呼び捨てにされたらムカつくだろーが。

「ああ、悪い昔のくせでつい。それよりさっきからお前の携帯鳴ってんぞ」

「あっおお。……もしもし、真実か?」

電話がかかってきたってことは、あっちも集合したんだろう。

席を確保しといて正解だったな。

「あいつらも三人そろったからこっちに向かうってさ。どんな姿で登場するか見ものだな!着物姿なんて想像できねぇよ」

三人っていうのは、良彦の元カノの山本真実、涼介の彼女の藤井京子、そして俺の彼女である明日美。

俺たち三人と同様にあいつら三人も昔から仲が良いもんな。

会場に集まっているのは新成人ばかりだからみんな同級生というわけだけど。

今日は誰もかれもめかし込んで大人な自分をアピールしているように思える。

俺も一応スーツ姿だけど、着慣れないせいか落ち着かない。

しかしこういう席では背筋が伸びるように気が引き締まるのが不思議だ。

緊張してるのか?

周りの女子はほとんどが着物姿だけど、俺にとって興味のない女の晴れ姿を見てもどうってことはない。

それは涼介や良彦も同じのようで、俺たち男三人他の女には目もくれず、雑談しながら待つ。

本当は明日美に会えるのが嬉しくて、早く晴れ着姿を愛でたくて、キョロキョロしたいところだけど……。

そんなみっともない俺を明日美に見られる訳にはいかないから、必死に我慢して雑談に専念する。

「おまたせー。みんな久し振り!町田くんとはこないだも会うたけどね」

「おっ!?おおっ!!ちょ、ちょっ、おま……真実か?」

良彦が山本の声を聞いたとたん立ち上がって歩み寄って行った。

涼介と俺もつられて立ち上がったが、あ…………。

一番後ろにいた明日美の全身が目に入ると、そばに近寄りたいのに金縛りにでも遭ったかのように動けなかった。

こういうのを艶姿というのか。

いつも見ている明日美だって文句なしに可愛いけど、今日の明日美は格別に綺麗で心拍数が跳ね上がってるのが分かる。

ヤバい、どうしたんだ俺。

明日美と上手く視線を合わせることができない。

俺をこんな風にドギマギさせるなんて、罪な女だ。

< 15 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop