いつも、ずっと。
「友也、友也ってば!ねえさっきから黙ったままで。ど、どうかな今日の私。ちょっとは成人らしくなったかな」

明日美に声をかけられてハッとした。

いかんいかん、今のは挙動不審ってやつだろ。

俺としたことが……。

気を取り直して明日美の傍まで歩み寄った。

「今日の明日美いつもより……綺麗か」

耳元で囁いてやると、明日美の透き通るほどに白い肌がほんのり赤く色づいた。

席に着いてからは、俺の目の前に座っている明日美の後ろ姿を思う存分に眺め尽くす。

座っているから着物姿はよく見えないけど、アップにまとめた髪や、うなじのラインに目を奪われる。

触れたい、今すぐに……。

「えー!絶対嘘やろー!『早よう二人きりでいちゃつきたか』って言うたとやろ?」

隣に座っている山本が明日美に囁いているが、内緒話のつもりか?

俺に聞こえていないと思ったら大間違いだ。

『いちゃつきたか』とは言ってないが、そう思ってるのは確かだ。

でもきっと俺だけじゃないぞ。

良彦も涼介も頭の中は妄想だらけに違いない。

「まっまさか!そがん訳なかやろ!」

慌てて否定する明日美が俺の悪戯心に火をつける。

『そがん訳なかやろ』とはどういうことだ。

お前のそんな姿を見せつけられて、俺が平気だとでも思っているのか?

さっきの慌てた様子はどこへやら。

急に黙りこくって、大人ぶってるつもりか。

それならコッチから仕掛けてやる。

目の前の綺麗なうなじに手を伸ばし、遠慮なく堂々と撫でてやった。

「ひゃっ!!なななな、なに!?」

すましてたって、すぐに俺の手によって翻弄される明日美が可愛くてたまらない。

「そ、そんがん驚かんでも……。明日美のうなじ綺麗かけん触りとうなった。今日は髪もフワフワ……。パーマかけたと?」

明日美がパーマかけるのは初めてだな。

あのサラサラなストレートの髪が好きなんだけど、これはこれで触り心地もいいし、またいつもと違った明日美が見られて嬉しい。

「うん……。髪ばアップにするとにパーマかけた方が纏まりやすかけんって。でも友也、今ここでうなじ触るとはやめてくれん?」

「なんだ……ちぇっ」

いいじゃないか、減るもんじゃなし。

ああそうか、恥ずかしいのか。

それなら後で二人きりになった時にでも触らせてもらおう。

そんなチャンスがあればだけどな。

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