いつも、ずっと。
翌日、明日美の誕生日。

記念すべき二十歳の誕生日だから、思い出に残る一日にしたい。

俺は気合いを入れて何日も前から計画を立てていた。

行き先は、ハウステンボス。

この日のためにJRのチケットとハウステンボスのパスポートを買って準備は万端だ。

きっと明日美は学生の俺に負担をかけたくないと思うだろう。

だけど俺だってアルバイトしてるから、少しくらい遊ぶ金は持ってる。

家庭教師のバイト代、けっこう弾んでくれてたからな。

近い将来のために、無駄遣いせず少しでも貯金できるようにしてるのだ。

いつも節約を心がけているから、大事なときにはケチケチしないで使う。

俺の場合、大事なときってのは明日美に関係することだけど。

とりあえず、ハウステンボスに行くことはギリギリまで内緒にして、長崎駅へ。

「もうそろそろ何処に行くとか教えてくれんと?」

俺たちが乗る予定の列車はまだホームに到着していない。

明日美がいい加減焦れてきてる。

「ねぇ友也。なんかヒントばくれてもいいんじゃ?」

ちょうどその時ホームにやって来たシーサイドライナーを指差し、あれに乗ると告げた。

明日美はハウステンボスに来るのは初めてらしい。

「俺もさ。明日美とデートでいつか行きたかったけん。今日は二人ともハウステンボスデビューすっぞ!」

入り口で入場券を買おうとする明日美に、すでに購入済みのパスポートを渡す。

やっぱり支払いの事を気にしてるんだな。

今日は明日美の誕生日なんだからと説き伏せると、やっと納得したように笑ってくれた。

「ありがとう。二十歳の誕生日は特別だね。今日は本物になったつもりでとことん甘えちゃおうかな!」

「おう、甘えろ甘えろ!明日美はいつも遠慮しすぎさ。俺にだけは遠慮すんな」

"本物"か。

いつも遠慮ばかりさせてしまって、本当にごめん。

俺だって時々分からなくなる時があるんだ。

明日美に"偽者"って思わせておくことが正しい道なのかと。

でももしこの道が間違っているとしても、引き返そうとは思っていない。

例えいばらの道でも、その先の幸せを信じて突き進む。

俺と明日美の幸せを手に入れるため。

だから、明日美のことはとことん甘やかしてやりたい。

こんな俺のワガママに付き合わせているんだからな。

二十歳の誕生日なんだから。

< 19 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop